【読書感想】ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち

NHKのスーパープレゼンテーションでこの本の筆者・J.D.ヴァンスのスピーチをやっていて、なんだか面白そうな人だなぁと思って、買って読んでみた。

トランプ政権を誕生させた、所謂“白人労働者階級”ってのがどんなものか、どんな思想を持った人々か、ってが中心トピックで、筆者の彼は白人労働者階級からアイビーリーグへ入学した、異質な存在。

白人労働者階級からアイビーリーグ、をある程度の語弊を覚悟して日本で例えるとするならば、生活保護世帯から国立トップ大、ってな感じだろう。彼のお母さんは結婚離婚を繰り返して、あげく麻薬中毒。祖父母が彼を正しく励まし続けてくれたおかげで、希望を捨てずにすんで、アイビーリーグを卒業して今は投資会社の社長をしている30代前半の男性の半生のお話だ。

 

人種のるつぼ、アメリカ。その中で白人と言えば一枚岩のような気さえしてしまうのだけれど、それが勘違いだったということはトランプ政権誕生でもうすでに分かっていることだと思う。

筆者の彼が説明するところとしては、アメリカ東北部に住むWASP(ホワイト・アングロサクソンプロテスタント)と対比して、アパラチア山脈周辺に住むスコティッシュアイリッシュの血筋を系譜とする貧困白人労働者層を「ヒルビリー(田舎者)」などと表現するらしい。

この本を読むと、ヒルビリーが社会に対して感じている負の感情がとてもよく分かる。そして肌の色が白い、というだけで下駄を履かせてもらえない事に不公平感を感じるのも至極当然な流れなのだな、ということも。(この筆者はとても強いけれど、みんながみんな、そうではないから。)

一方で、日本にも(程度の差はあるにせよ)このような話がないわけではなく、よくネットに匿名で書きこまれたりする類の話の域を大きく超えるものではない。手元に情報がないから、情報を得る方法が分からないから、そもそも行政がどんな手助けをしてくれるか知らないから、必要な給付や援助を受けられない層ってのは、日本にも普通に存在するわけで、国は違えど内容的には類似点が多い。

確かに、トランプ政権誕生がこの本を有名にさせて、タイミングに恵まれて世に出てきて、日本語にまで翻訳された本、ってな部分も多いにあるだろう。トランプが出てこなかったら世に出なかった本であることは間違いない。それでも読んで損ということはないし、所謂WASPがこの本を読んでどんな反応を持ったのかにも興味があるし、もし日本人版のこんな話があれば、ぜひ読んでみたいもんだと思う。